米国調査報告の第21回です。NIH( National Institute of Health )でお世話になった、 Rebecca E. Chen さんのお話です(肩書きは、 Senior Program Support Specialist とありましたので、単なる秘書さんではないようです)。
NIH(国立衛生研究所)は、17の組織が集まっている集合体の総称です。国立アレルギー研究所、国立代替医療研究所、などが含まれています。ここは研究機関であり、一般の臨床研究の対象になる患者だけでなく、一般の病院では扱えない患者も対象になります。生命倫理センターは、17のセンターに関わる家族や看護師や医師が、倫理的なコンサルテーションが必要になった場合に、相談にのったり、問題解決に力を貸すことになります。ですから、17のセンターすべての倫理的な問題を取り扱う事になります。
17のセンターすべてに治験委員会があり、そこでプロトコール(臨床研究の計画)が検討される時に、ここのメンバーが参加し、倫理的な面での意見を述べ、決定を行う上での援助を行っています。治療についても、17のセンターで、 advance directive (事前指示。連載の第20回参照)を行うようにしているし、事前指示の書き方や書式についても指導しています。
もう一つが、教育的な機能で、研究者などを対象に世界的に教育を行っています。3ヵ月前には長崎で行いました。また、国際倫理委員会があって、そこで委託されて、いろんな臨床研究の倫理面での検討も行っています。
ここで勉強すると、どんな資格が与えられるのかということですが、国家による学位ではありませんが、ここの研究所が出す証書があります。大学4年の学士が入って来たり、MD、PhDが2年間勉強に来ます。2年間の間に論文を書きますし、ここはレベルが高いので、ここで証書をもらうという事は、米国社会では何等かの資格を持っているのと同じくらいの評価がえられます。大学を卒業した後ここで2年いると、修士のレベルではあるが、かなり高いレベルとして評価され、博士の候補として見られる人が多いのです。
ここで勉強する人はレベルが高いという事で、さまざまな医学会で発表したり、世界で報告したり色々なチャンスがあります。国際学会やセミナーなど、NIHが企画した会合でも報告するチャンスがあります。ウルグアイ、ガーナ、マライ、日本、インド、来年は中国で行います。他に、ブラジル、タイ、タンザニア、など海外でのセミナーなどにフェローが発表します。
(この項、終わり)