アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第4回)

 医療倫理小委員会の米国調査報告第4回です。 Georgetown 大学の Siva Subramanian 先生のお話しです。

NICU前の廊下で説明を受ける

NICU前の廊下で説明を受ける

臨床の現場で倫理的に問題がある場合、看護師が倫理コンサルタントに持ち込むケースが一番多いです。生命倫理が進化してきた背景には、看護師がアクティブになった事があります。

看護師がまず医師にお伺いを立ててから問題にする必要がなくなり、看護師が直接倫理コンサルタントに相談に行けるようになりました。看護師がそうしたからといって、マイナスに評価されたり、昇進ができなくなるとか、そういうことが無いように気をつけているからです。

看護師がアクティブになったきっかけというのは、大きな事件があったとか、何かの運動があった訳ではありません。よくよく考えてみれば看護師が一番ベッドサイドにいる訳です。患者が何を考えているか、親が何を考えているかが一番よく分かっています。その情報が不十分な時に、意思決定をする時の問題が起きてくる訳で、十分情報があればそういうことは起きない、やはり看護師の意見というのは大事だと考えられて来ました。

2つ目の理由としては、ここ 30年から40年の間に、看護師がとても独立した存在になってきました。何が適切で何が患者にとってよい事かということを看護師が主張するようになってきたということです。

もう1つはっきりとしてきたのは、医師の下に看護師がいるという形から、チームの一員という同等のメンバーの1人となってきたことが、より一層看護師の位置付けを強くしたのではないかということです。以前と比べると、確かに医師は大変偉い人だというイメージは少なくなっていますが、やはり医師と患者というのはどうしても主従の立場になりがちです。そこに看護師が入り、患者さんが自分の意思をより伝えやすいため、医師より看護師の方に大事な情報を伝えることが多いという現実があり、看護師の立場が強くなってきたということもあります。

NICU退院後に送られたきた写真を飾っていました

NICU退院後に送られたきた
写真を飾っていました

歴史的な流れとしては、 1960年くらいから、ヒッピーの運動にみられるように、自分のことは自分で守ろうといった、自主的な態度や独立性を重視する考え方が広まって来て、医療の分野でも患者の自主的な権利が重視されるようになりました。また、男女の社会的役割の差別がだんだん消えていきました。そして、チームの中での看護師としての独自性が高まってきたということです。

看護師の学歴が高まってきたこともあると思います。看護師で学者ということが増えてきました。看護師が書いたものが、学術的でなおかつ看護師の視点から書かれているということで、看護師の力が高まってきたのではないかと思います。

(次回からは Carol Tayler さんの話です)