アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第3回)

日生協医療部会・医療倫理小委員会の米国調査、第3回目の報告で、 Georgetown 大学の Siva Subramanian 先生のお話しの続きです。

Subramanian先生

Subramanian先生

医師など医療従事者と患者の間、医療チーム内の意見が食い違った時に、倫理コンサルタント(ethics consultant の仮の訳です)が役割を発揮します。倫理コンサルタントの仕事は、事実がどういうことであるかということをはっきりさせることです。どこに対立点があるかということをはっきりさせて、看護師とだけで話をしたり、あるいは医療スタッフ全体と話をしたりして、その結果、提言を作り上げていきます。しかし、最終的な結論は、やはり医師と両親の間で話をするということになります。倫理コンサルタントには、結論を出す「権限」はありません。

倫理コンサルタントは病院内に7人から8人いて、病院全体の問題に関わっています。当番制で、ページャー(ポケットベル)で呼ばれ、「こういう問題があるからどうするか」と、様々な問題に関わって話し合いをします。必要があれば臨時の委員会を作り検討しますが、 Georgetown大学以外の病院では、地域住民をメンバーに入れることもあります。病院の近くに住んでいる人や、例えば、障害者の問題に詳しく関わっている方などです。

医療費支払い担当の方と

医療費支払い担当の方と

倫理コンサルタントの他の役割は、患者やスタッフのトレーニングです。新生児や出産前妊婦に関する生命倫理のトレーニングをやっています。レジデントや医師、看護師に対しても、こういうものを読みなさいとか、ああいうものをしたらいいですよとか、そういうセミナー、教育、指導をやっています。

それとは別に毎月倫理会議というのが開かれます。その時は、看護師やレジデントや医師で一杯になります。そこで、こういう問題があった、ああいう問題があった、それについてどう思うかという会議が毎月一度開かれます。

こういったシステムは、病院によって違っていて、倫理委員会(ethics committee)として活動しているところもあります。その責任者はたいてい医師ですが、病院の事務関係、管理関係の人はなるべきではないということが大前提になっています。医師でなければ、看護師など医療チームの中の人が責任者になっています。倫理委員会はどういうものですか?と問われても、モデルはいっぱいあって、場所によっては全然違うということです。

生命倫理の中心的な問題は、医療行為について決定をする人(本人や家族)と、患者にとって何をすべきかということを考える人(医療従事者)の間で対立が起きた時に、意思決定をどのように行うのか、という事です。

(つづく)

注:本報告は、私たちの訪問先の紹介なので、組織形態や職種名が米国全土で同じではないようです。ただ、考え方や実践の基本は同じであるようです。