アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第5回)

年末年始で少し作業が遅れて申し訳ありませんでした。医療倫理小委員会の米国調査報告第5回、 Georgetown大学のCarol Tayler 先生のお話しです。

テイラー先生

テイラー先生

キャロル・テイラー先生は、博士号( PhD)を持つ登録看護師(RN:registered nurse)で、Georgetown 大学の臨床生命倫理センター長です。

このセンターは、医師や看護師が生命倫理の博士号を取るために開設されていますが、大学病院が併設されているため、医療現場で実際にはどういうことが起こっているかということに触れる事ができます。

アドボケイトの実際の役割の実例を少し紹介します。

1例目は、肥満の手術後の女性ですが、 10ヶ月あまり経過した時にお腹に小さな水泡ができました。経過を追うと、実はそれが感染であるという事が分かりました。最初の担当の医師は、「皮膚科で形成手術をすればいいだろう」ということでした。もう1人の医師は、手術の状態によっては最初に手術した医師がいた方がよいかもしれないということでした。

患者さんは、最初に手術した先生がいないものですから、とても不安になりました。そして、アドボケイトに電話をしました。アドボケイトの方から「絶対に、はじめに手術をされた方が現場に立ち会わないといけない」ということになり、出張中の医師に電話をしてその先生は立ち会うことになりました。

テーラー先生の講演風景

テーラー先生の講演風景

この話で大事な事は、アドボケイトを通してそういう手順が踏まれたということです。アドボケイトという1つのステップを置くことによって、患者さんの権利が守られたという事です。ですから医師や看護師が、患者さんの期待に沿うようなことができていなかった場合に、アドボケイトに言って自分の権利を主張して守ってもらうということです。

こういう例もあります。夜勤の看護師からの相談です。 97歳の方で、ナーシングホームからこちらの病院に移って来た方で、認知症もかなり進んでいました。呼吸困難と感染症があるが、家族が見つからないということでした。彼女の治療に関して決定をする人がいないのです。お腹に穴を開けてチューブを入れるという医療行為について、決定ができないのです。つまり誰が治療に関する決定をするか、患者にとってベストな選択肢は何かということに関する相談がされている訳です。

生命倫理の中心的な問題は、医療行為について決定をする人(本人や家族)と、患者にとって何をすべきかということを考える人(医療従事者)の間で対立が起きた時に、意思決定をどのように行うのか、という事です。

(次回に続く)

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