米国調査第32回です。 Northwest Health Care Center の市原さんのお話です。
DCは狭く、15分で端から端までいけます。北がメリーランド州、南がバージニア州でDCとの間にポトマック川があります。橋を渡らないといけないので不便で、殆どの患者がDC内かメリーランド州の南の方からきます。非常勤の医師も提携病院で働いている事が多く、入院患者を元の病院に送ることが出来ます。
Northwest Health Care Center は、株式会社の経営です。米国では経営母体と運営母体が違う事がありますが、ここは、 Beverly healthcare が所有し、運営しています。我々は、ビバリーの子会社の Aegis (イージス)に属するセラピストとして派遣されています。ビバリーの経営する施設以外で働く場合もありますが、ここは、ビバリーの施設なので、やりやすいと言えばやりやすいのですが、仕事が多くなるという点もありますね。
ここは、ノースウエスト・ヘルスケアセンターといって、分類としては skilled nursing facility (第 19 回参照。以下、 SNF と略)です。急性期を過ぎた亜急性期から慢性期にかけてのケアをする施設です。米国には長期ケアのシステムがなく、国民全体をカバーする保険がありませんから、ここに入居しているのは、殆どがメディケアかメディケイドを利用しています。
メディケアについて大ざっぱな説明ですが、メディケアAが病院で急性期から亜急性期を見て、メディケアBが亜急性期から慢性期に対応します。
メディケアを使えるのは年間 100 日で、急性期の脳卒中で入院したらメディケアAを使い、医師への支払い(ドクターフィー)や入院費用を支払います。その後、急性期と言っても1週間、時には3日で退院ですが、状態が安定すると SNF に移ります。そこから 100 日の計算が始まります。例えば、 SNF でリハビリを20日位して退院すると、 80 日残ります。その後、新たな状態が発生して SNF に入所すると、残りの 80 日からスタートします。
しかし、なかなか家に帰れない人はいるので、 100 日を使いきるとその後は無保険になります。収入が少なく家を持っていなければ、メディケイドを申請して、メディケイド・ウェーバーとして医療を受けますが、実際は殆ど施設の持ち出しになります。
注:メディケアAは入院医療に対応し、連邦政府の財源と労働者の収めた社会保障税の一部(給与の2.9%相当)で構成される。メディケアBは外来医療に対応し、4分の3が連邦政府、残りを高齢者が保険料として負担(毎月4000~5000円)。(第30回で紹介した三浦さんの本を参照しました)
(次回に続く)