アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第34回)

米国調査第34回です。 Northwest Health Care Center の市原さんです。.

病棟の体制ですが、米国では看護師の配置基準はありません。ここでは、日勤帯で一つの病棟 30 ~ 50 人の患者に対して、正看護師が 12 ~ 13 、准看護師が 10 人前後、介護福祉士が 10 人くらいです。夜勤帯はそれぞれ1、3、5~6人で1病棟 10 人くらいです。

注:日本と制度が違うので、正確な訳ではないが、 RN : Registered Nurse (正看護師)、 LPN : licensed practical nurse (准看護師) CAN : certified nursing aid (介護福祉士のような役割)としました。

本音を言えば、これでも大変です。特にここは、 300 床以上あって規模が大きく患者の要求も多様で、一人一人のニーズに対応するのは難しいのです。また、米国の医療従事者の不足は日本以上です。看護師になりたがらないので、不足しています。日本と一緒ですね。フィリピン、アフリカ、中米などから看護師も医師も来ます。文化の違う人達、英語が話せてもアクセントが強すぎて何を言っているの、と言われる事もある。文化の違いから来る患者との軋轢も感じます。看護師のいた元の文化(母国)の中では問題にならない態度だとしても、こちらに来ると違うように受け止められる。そういう事も十分配慮しておかなければいけません。人手不足の中でそういった問題もあります。

ホテルのロビーのパソコンから、香川医療生協のHPにアクセスしてみました

ホテルのロビーのパソコンから、香川医療生協のHPにアクセスしてみました

プライバシーの問題もそうです。アジアのような集団的な価値観を持ったスタッフが、米国社会の個人主義社会の中で、どう患者さんと接するか、大きな問題を内在しているのではないでしょうか。

米国の学校では、 culture sensitivity 、文化の違いに敏感になろうという動きがあります。

母国での教育を受けて来て、そういうセンスや概念がないということもあるでしょう。

スタッフ同士の人間関係もあるし、最初は、そんなことをしたらダメじゃない、と日常的に指摘して気付いてもらう。それでダメなら、こんな事があったと上司に報告して改善してもらう。ビバリーの中でも、問題をあげていくシステムがあります。新人教育の中でも指摘されますし、研修もしていきます。

この施設に限った事ではありませんが、一般的にいって、患者の権利を守る事については米国の方が進んでいるところもありますが、患者の権利については、経済原理の中で、経済と権利を天秤にかけないといけない事もあります。同じ次元のものでないのに、どちらか選ばないといけない事もあります。

事前指示( advance directive )にしても DNRにしても、患者の権利を尊重する取り組みではありますが、裏側には米国が訴訟社会である事という背景もあります。非営利団体なら患者の権利を全面にだせますが、株式会社なら何かあったときのために、という側面も強いのが実際です。

(次回に続く)