アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第27回)

米国調査第27回です。今回は、ホスピス医療・緩和ケアを行っている、NHPCO(National Hospice and Palliative Care Organization)の副代表で、Professional Leadership & Consumer and Caregiver Service 部門のブラント(Kathy Brandt)さんです。

消費者に対する教育を主に担当しています。また、ここには、色々な電話がかかって来るので、それに対応しています。地域にあるホスピスについても問い合わせがあるので、それに対しても対応しています。

何年か前に政府から助成金がでて、消費者に対応する広報をやってほしい、という事で、CARELINKというプロジェクトを立ち上げました。WEB上で見る事ができますし、本にも載っていますが、ホスピスについて知らせると住民に知らせるためのキャンペーンを行っています。

米国では、死について最後まで語らないのが普通です。危機に陥った時に初めて考え始めるのです。そして、家族に対する影響も考え始めます。

Brandtさん

Brandtさん

ホスピスに入って来る人が良く言うのは、もっと早い時期からホスピスの事や事前指示の事を知っていればよかったのに、という事です。ですから、そういうニーズに我々が応えられるという事を知らせる必要があるのですが、難しい事です。

1970年代にカレン・クインランさんの事例がありました。家族が呼吸器を外したいと申し出ましたが、医師たちはそれはできないと主張したので、裁判になりました。ニュージャージーの最高裁判所までいったケースで、人工呼吸器を止めることになったのですが、外した後約10年間生き続けました。微妙なところもある問題です。私は小さかったのですが、話題になっていた事は覚えています。ただ、その後、この問題について、みんな忘れてしまったようです。

(次回に続く)

 

注: Karen Quinlan 事件

1975年、米国のニュージャージー州で、21才の女子大生のカレン・クインランが、パーティーでアルコールと精神安定薬を飲み、昏睡状態になり入院した。呼吸が停止したために、人工呼吸器が使用されたが、意識は回復しないまま数箇月がたった。両親が人工呼吸器の取り外しを申し出たが、病院側は応じず裁判になった。裁判所は「裁判所で決める事項ではない」と訴えを却下したが、翌年になり依然として意識が回復しない状況に鑑み「人工呼吸器の取り外しの権限を父親に与える」という決定を下した。 事前の意思表示がない中での判決と言う点で、問題は残している。