アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第40回)

連載を終えて(第40回)

随分長い連載になりました。 2005年11月20日に帰国してから、8ヵ月が過ぎようとしています。最初からお読み頂いた方がもしいたなら、心より感謝したいと思います。半年以内に成果物を出版する事を目標にして作業を行って来ましたが、大幅に遅れてしまいました。おかげで、私の肩書きも「高松平和病院院長」から「香川医療生協理事長」に変わってしまいました。

しかし、時間が経つに連れ、関連書籍を読み直したり新たな文献に触れ、認識が新たになりました。もっと勉強をして行けばよかったという思いもありますが、最低限の知識を元に、偏見にとらわれずありのままに感じとって来た事がかえって良かったのではないか、という感想をもっています。

米国は広い、というのが実感です。東海岸と西海岸で時差が3時間ある、飛行機で飛んでも5時間かかります。そして、州によって法律も少しずつ異なっているため、「米国では………」と記載することにも、「本当に全米でこうなっているのかな」と少しためらいを感じながら、連載して来ました。

入国審査は厳しかったが、出国はこの自動機械で一瞬のうちに終わりました(アトランタ空港)

入国審査は厳しかったが、出国はこの自動機械で一瞬のうちに終わりました(アトランタ空港)

やはり、現場にいって自分の目で確認する事が重要だという事を強く感じました。SNF( Skilled Nursing Facility)と本で百回読んでも頭に思い描くことは不可能ですが、1ヶ所を見れば(そこが典型的でないとしても)ある程度理解が可能です。特に、今回は現場で仕事をしている人へのインタビューを中心にお話を伺うことが出来、現時点での米国の患者の権利擁護システムの実態に触れ、理解できた事は大きな収穫であったといえます。

今回の視察をコーディネートしていただいた、木村利人(きむら・りひと)早稲田大学名誉教授(現・恵泉女学園大学学長)からも、現時点での最新情報だと評価を頂いています。

問題は、今回学んだことを、日本の医療、とりわけ医療生協の医療活動の中にどう生かすかという事です。

いま、日本の医療制度は、米国型の「個人責任」中心の制度に変わろうとしています。もちろん、このまま制度改編が進むとは思えませんが、日本の文化、これまで培って来た日本の医療制度の優れた側面を大事にしながら、新しい時代に対応した医療制度に切り換えていく必要があります。

今回の調査で、学んだ事を生かして、情報発信を行っていきたいと思います。

2006年7月27日
高松平和病院 藤原 高明