まとめに代えて(1) 連載第37回
日本生活協同組合医療部会・医療活動委員会は、「医療生協の患者の権利章典」の具体化と定着をすすめるために、諸外国の患者の権利擁護システムを調査し報告」する事を決め、この分野では最も進んでいる米国の調査を行うことにしました。
「医療生協の患者の権利章典」の実践は、全国で行われていますが、患者の権利章典の掲げる理想と、現実に行われている医療のあり方が大きく掛け離れているのではないか、患者の権利章典を日常の医療の中でどう実践していくか、日常的にどう定着させていくかという事が求められている、という反省の元に、「患者の権利章典実践ガイドライン(案)」を作成し全国に広める活動を行って来ました。
同時に、医療のあり方そのものに目を向けた問題提起や、医療現場における様々な意志決定を行う際の考え方についても提起する必要性が求められていると考え、医療倫理研究会公開学習会を定期的に開催して学習を深めて来ました。
その中で、「倫理的意志決定」のありかたや、「患者の権利を擁護するシステム」( patient advocate )について、更に調査・研究を深めていく事になりました。
今回の渡米調査の主な目的は、「 bioethics 」「 advocate 」をキーワードにして、米国の医療現場で、どのようなシステムが構築され、臨床の現場でどう機能しているのかを、直接みてくる事でした。そして、日本の、とりわけ医療生協の活動にどう役立てるかの提言を行う準備をすることでした。
この連載では、第30回を除いて、米国の医療システム、とりわけ患者の権利を擁護するシステムなど、優れた側面について述べて来ました。優れたシステムから、日本の事情にあったものを学べばよい、という考え方があったからです。
しかし、調査チームのまとめの会議の中で、このまま「よいところ」だけを強調したのでは米国医療の全体像を伝える事にはならないのではないか、という意見がでました。しかし、よいところもあれば悪いところもある、という報告では何がいいたいのか明らかでなくなり、今回の調査報告の目的が曖昧になるとも考えました。
そこで、報告の中心は「患者の権利擁護のシステム」の現況を伝え、日本で応用する時の資料になるように編集する事にしました。米国医療の「影」の部分は、この連載では、第31回~第35回の市原さんのインタビューの内容と第30回の内容に反映されています。
(この項続く)