アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第2回)

日生協医療部会・医療倫理小委員会の米国調査、第2回目の報告です。

11/13(日)の16:30に成田を出発、アトランタを経由してワシントンD.C.のダレス空港に到着したのは、同日の18時過ぎでした。翌14日(月)の午前9時(日本時間で14日の23時!)から、調査開始です。

会談中のSubramanian先生と藤原院長

会談中のSubramanian先生と藤原院長

最初にお邪魔をしたのは、生命倫理( Bioethics )研究では世界で最も進んでいるといわれている Georgetown 大学です。 Siva Subramanian 教授から、生命倫理の歴史についてお話を聞きました。生命倫理の研究ではジョージタウン大学が一番古く、1971年から72年頃に概念ができ上がり、それ以来35年になるが、完成した概念ではなく常に進化しており、今でも様々な考え方を取り入れて成長している、との事でした。

日本で生命倫理の考え方が広まることに強い期待と関心を持っているが、重要なことは日本の伝統や文化を尊重しながらどうやって生命倫理を全うして行くかが大事で、米国の生命倫理が全く同じ形で日本に導入されるとは思っていない。日本に合った日本独特の生命倫理の有り方を探っていかなければいけないと思う。ただ一つ言えることは、日本人であれ米国人であれ、基本的な患者の権利はどこでも同じだという事だ、と強調されました。

新生児室では、重症で他の病院から運ばれすぐに処置が必要な事が多いため、生命維持装置の装着など何等かの処置が速やかに行われた後に、親御さんに、今後の治療方針や予後についてのインフォームドコンセントが行われる。その際、教育の有無や医療知識の有無に関係なく、とにかく必要な情報をすべて提示するのが大事。それがいい結果であれ悪い結果であれ、同意しようと同意しまいと情報を提供するように変わって来た。予後が難しいという事があっても、絶対に隠すことはなく、すべて親に話をする。医師が一方的な決定をするという事は決して許されない、という事になっている。

医師と家族の間で合意できない時には、重要なのはコミュニケーションで、理解できるまで、看護師やソーシャルワーカーや、必要ならその分野の専門家も話し合いに加わる。そこで、どうしようもなくなったら次のステップになる。

合意しない場合や意見の対立がある場合、倫理コンサルタントという役割をもった人がいる。これは、治療に関わっている全ての人に質問をして、必要な勧告を行う。医師が問題ないといっても、看護師の声を聞いたり、チームのメンバーに意見を聞く、親にどう思っているか聞き、提言を行うことになる、との事でした。

米国の医療には、患者の権利を守る仕組みを様々な形で作っている事が理解できました。

(つづく)