アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第10回)

米国調査報告第10回 Kathleen Neill さんのお話しの続きです。

治験医は、次の事を明らかにしておかなければいけません。研究の目的は何か、期間はどれだけか、どの様な手技が行われるか。予測可能なリスクや不快感、被験者やその他の人にどのような利益が得られるか、適切な代替法は考えられるのか、などです。

情報開示の要素として、プライバシーが保護されているか、障害が起きた時にそれを補償する手続が取られるか、研究や被験者の権利に関して相談できる人が明らかになっているか、参加はあくまで自主的なものでなくてはいけない、などについて明らかにする必要があります。

確実に理解してもらうために、米国は多民族国家なので、言葉の難しさや識字能力が問題になります。識字能力がなければ説明を簡単にする、言語の理解能力があるかどうかテストを行って能力を知る、なども必要です。

十分理解をしてもらうという点で、米国では、医師が白衣( white coat )を着るより赤い服( red coat )を着た方がよいと言います。赤は警告の意味ですね。危険の意味かもしれませんが(笑)。医師が白衣を着ているだけで、患者は尊敬の念を持つものですから。

キャサリーン・ニールさん

キャサリーン・ニールさん

患者あるいは被験者は立場上弱いので、その立場をきちんと評価する必要があります。臨床試験に組み込んだ方がその人に取ってよいのか、あるいは除外した方がよいのかを考える。

弱さに対しては、自主的な合意を得るのは難しい事もあるので、弱みのない患者で治験を行う方がよい事になります。

弱い立場とは、子供や囚人、妊婦、知的弱者、教育レベルや経済的に低い立場の人です。組織によっては学生、従業員、終末期患者、を含めている所もあります。弱い立場の人を組み込む時には、(1) その人を組み込まなければ試験が成り立たない、(2) 弱い立場の人にも便益があればよい、(3) 便益をうけられる、(4) 便益がないのに参加させられる人のリスクは、最低でなければならない、(5) 代理人の同意がなければならない、などの条件が必要です。

インフォームド・コンセントを良いものにするためには、1回でOKしてもらうのでなく、次回の話合いで同意してもらうという2つのステップを踏むというやり方も大事です。2つめに医学研究担当のアドボケイト( research advocate )に間に入ってもらう。3つ目に経過を観察する。つまり、インフォームド・コンセントを行った後に話をして、きちんと理解できているかどうかをモニターする方法もあります。

治験におけるインフォームド・コンセントを考える時、以下の3つの点が重要です。患者を尊重( respect )する事、患者に便益( beneficence )をもたらす事、そして公平さ( justice )です。

(次回からは、 Ann Neale さんです)